低倍率が実現する明るさ、見やすさ

低倍率が実現する、「明るさ」

双眼鏡や望遠鏡の像の明るさを表す一般的な式は、以下のようなものです。

対物レンズ有効径を小さくすると、像が暗くなるのがわかります。また、倍率を高くしても、やはり像は暗くなるのがわかります。

この式に、ヒノデ5x21-A5をあてはめてみると、明るさ=16となります。これがもし、8x20の双眼鏡ならば、明るさ=6.25となります。10x20ならば、明るさ=4となります。

つまり、5x20mmの双眼鏡は、8x20mmと比べると2倍以上の明るさなのです。10x20mmと比べれば、実に4倍の明るさとなります。

低倍率が実現する、「見やすさ」

双眼鏡の倍率は焦点距離と関係があります。焦点距離というのはなじみがない言葉かも知れません。レンズの真ん中から、焦点が合うところまでの距離です。図で表せば伝わるでしょうか。

上の図は接眼レンズ対物レンズを一枚に省略して、プリズムを全く省略しています。しかし双眼鏡の中はおおむねこんな感じです。

倍率は、次の式で表されます。

同じ倍率で考えるとき、対物レンズの焦点距離を短くすると、接眼レンズの焦点距離も短くなります。

また、対物レンズの焦点距離を固定した場合、倍率を高くしようとすると、接眼レンズの焦点距離を短くする必要があります。

コンパクトな双眼鏡を作ろうとすると、対物レンズの焦点距離はあまり長くすることができません。そこで倍率を高くしようとすれば、接眼レンズの焦点距離を短くしなくてはなりません。

構成枚数の少ないシンプルな接眼レンズの場合、焦点距離を短くすると、接眼レンズの直径がちいさくなり、アイレリーフも短くなる傾向があります。そうすると、小さな穴に目をうんと近づけて見る感じになるので、のぞきにくい双眼鏡になってしまいます。レンズ枚数を増やせば解決しますが、そのぶん重量が重くなり、コストも高くなってしまいます。

一方で、低倍率の場合はどうでしょう。倍率さえ欲張らなければ、接眼レンズの焦点距離をある程度長く取ることができます。こうすることで、少ないレンズ枚数でも接眼レンズの直径が大きく、アイレリーフもそこそこにある、のぞきやすい双眼鏡作ることができるわけです。レンズ枚数が少なければ、その分軽量になり、価格もお求め安くなります。

低倍率が実現する、楽しい双眼鏡ライフ

倍率を抑えるだけで、明るく、のぞきやすい双眼鏡を、より安いコストで作ることができるわけです。さらに、倍率が低ければ低いほど、手ブレの影響が少なくなり、実視界は広くなります。つまり、逆に倍率を高くすると、これだけ多くの性能が犠牲になるのです。

下の写真を見ても、5倍は十分な倍率だと理解できるでしょう。それ以上の倍率を求めても、失うものが大きければ意味がありません。私たち日の出光学は、使い勝手の良さにこだわるからこそ、低倍率をお勧めします。とりわけ、口径15~25mmのコンパクトな双眼鏡には、4~6倍の低倍率が最も適していると考えています。