生産国と表示について

現在、定価2万円以下の双眼鏡で、日本製というものはほとんど見かけなくなりました。

あったとしても、長い間在庫されていたものでしょう。私の調べた範囲では、各社のカタログに掲載されている現行品の中には、見当たらないようです。実際に、国内の工場を見てまわっても、作られているのは、ある程度価格が高い中級以上の機種ばかりなのです。

しかし、それは一般にはあまり知られていません。なぜでしょう?

おそらく、双眼鏡メーカー各社のホームページやカタログを見ても、生産国の表示がないからでしょう。生産国を表示する義務はないので、表示していないのです。

コラム「OEMと中国生産」でも説明しましたが、現在、中国で作られるの双眼鏡の質は、あがってきています。定価2万円程度までの機種なら、中国で作るほうが、同じ機能で、同じ品質のものでも、より安く作ることができます。同じ値段で売られているものなら、中国製のほうが高性能ということも、最近ではよくあることです。

もちろん、日本製もまだまだがんばっています。2万円を超える中級機にも中国製が増えてきましたが、やはり、5万円を超えるような製品になると、日本製が多いのです。まだまだ中国は、高価格の製品を任せるには心配なところがあるということでしょう。

日の出光学で取り扱う双眼鏡も、韓国製、中国製、日本製、とバラエティーに富んでいます。しかし、どこで作られたものでも、品質に対して妥協はしていません。

確かに、一般に販売されている中国製の双眼鏡のなかには、かなりひどいものもありますが、日の出では、そういう製品を安易に扱うことはしません。

日の出光学では、中国製、韓国製といっても、必ず、日本の工場と提携して、日本で検品を通しているか、親会社が日本の会社であり、間違いない生産技術と、厳しい検品基準があることを条件としています。

たとえば、A1を生産している韓国の工場はそこそこの品質ですが、若干詰めが甘いようです。もちろん、韓国の工場内でも検品はしているはずなんですが、日本での検品は不可欠です。

日本ではまず、レンズの汚れ、内部のゴミといった基本的なチェックをします。 そして、通称「スクリーン」と呼ばれる光軸検査機による検査をとおします。そして、抜き取り検査でコリメーターという検査機によるチェックをします。同様に、チャートを使った眼視による検査をもおこないます。これらの検査を厳しく行うことで、品質をあげています。

しかし一方で、お客様は工業製品の生産国表示を大変気にします。(実は、私もその一人なのですが・・・)そして、日本製でない製品はそれだけで、低く評価されてしまいます。中国で品質を上げるために費やした、長い時間と努力が、表示ひとつのせいで水の泡になります。だから、各社とも、HPでは生産国表示をしないのかもしれません。

日の出も、ホームページ開始当初は生産国の表示をしませんでした。

しかし後日、5x20-A1の生産国はどこですか?という質問をいただきました。A1は韓国製ですので、その旨をおつたえしました。

そのときふと、頭をよぎったのは、「やっぱりお客様は生産国が気になるのだ」ということです。お客様が知りたいことを隠しているのは日の出らしくない、と思いました。考えた末、生産国を表示することにしました。

しかし、生産国を表示すれば、売上げに影響が出るかもしれません。

間違いのない工場を選び、検品を徹底して、品質を上げても、その商品がお客様の元に渡らなければ、私たちにとっても、お客様にとっても損失です。そこで、この文章を掲載することにしました。

正直、この文章を掲載しても売上げに影響するようなら、日の出光学のあり方を再度考え直す必要が出てくるでしょう。しかし、少なくとも今のところ、私たちは、心あるお客様方が、日の出を支えてくれることを信じています。低倍の良さを、多くの方々に理解していただけたように、誠意をこめた仕事は必ず皆さんに伝わると信じています。