コーティングのしくみについて
メガネやカメラレンズなど、レンズコーティングは身近なところ使われている技術ですが仕組みは意外に知られていないようです。
私自身も光学設計の専門家ではないので、正確に理解できているかは正直自信がありません。しかし、素人が自分の理解の範囲内で説明すると意外にわかりやすいかもしれません。ということで、今回はコーティングの仕組みについて書きましょう。(専門家・愛好家の皆さんからのご指摘、修正、大歓迎です。)
コーティングされたレンズに向かって光が射すとき、まず、コーティング面で一度反射し、さらに、レンズ表面でも反射します。
このとき、コーティング面で反射した光(図の赤い矢印)と、レンズ表面で反射した光(青い矢印)は、干渉を起こし、互いに打ち消しあいます。(光は波動なので干渉します。このあたりは物理学の分野ですね。)
打ち消しあった光は消えてしまうわけではありません。反射の方向に流れなくなった光エネルギーは、エネルギー保存の法則に基づいてレンズを透過する方向へ流れます。(光はエネルギーです。これも物理学ですね。)
こうして、反射率は下がり、透過率は上がります。
コーティングをする際には、まず、上手く干渉が起って打ち消しあうように、適切な物質を選びます。そして、その物質を、真空蒸着という方法でレンズ表面に付着させ、膜を形成します。
一つの膜で構成されているのがモノコートです。異なる物質で構成された、複数の膜で構成されているのがマルチコートです。
高級な双眼鏡にコーティングをする際には、光学系全体をみて、総合的に検討します。その検討の結果、各レンズ・プリズムについて、コーティングの層数、使用する化学物質、各層の厚さなどを個別に決定します。
この設計は、コンピュータープログラムによるシミューレーションを通して、緻密に行われているようです。