お客様の声(神奈川県横浜市/S様)

正直言って、ウェブサイトを見るまでは双眼鏡の6×30というスペックには関心がありませんでした。解説や、紹介文、ユーザーレビューを読んでから気になり始めたのです。

それまでは、双眼鏡は手持ちで問題なく使える大きさ、重さ、倍率を気にしていて、8×30あたりが自分の中ではスタンダードでした。いくつかの双眼鏡を購入していますが、それらはすべて8倍の物ばかりでした。そして、もっと高い倍率の双眼鏡に関心が向いて、防振機能のある双眼鏡を購入しました。

防振機能の付いた10倍は鳥が大きく見えて良かったのですが、使う場所によってはその倍率の高さ故、扱いやすい物ではありませんでした。そこで、この双眼鏡のサブになるものとして8倍より低い倍率の双眼鏡の購入を検討するに至りました。ここで気になったのがヒノデでした。

しかし、現物は店頭にはありませんので、代わりに他社の同スペック品を覗いてみました。まず、明るい視野が快適に感じられました。手振れの影響を確かめるため遠くの細かい字を見てみると、8倍の双眼鏡よりも文字が判読できることが分かりました。「おやっ、これは8倍より使えるかもしれない」と感じて、あらためて日の出光学さんのウェブサイトを見直しました。もしかして、双眼鏡の基本は6×30なのではと考え直し、具体的な購入の検討を始めました。店頭で覗いたものでも十分かなとも思いました。何しろヒノデの3分の1近い値段でしたから。それでもウェブサイトの紹介記事にある「フラッグシップモデル」という言葉が引っかかり、いろいろ悩んだ末、購入を決めたのでした。

ヒノデを使って「これはっ」と感じたのは、よく行く市内の公園の丘の上から景色を見た時でした。ちょうど陽の光が斜光線で木々に当たっていて、その付近を覗いていたら、斜光線に当たった木々が輝き、その奥の日陰になっている木々とのコントラストが非常に美しかったのです。何の変哲もない、条件さえ整えばいくらでも見える普通の風景なのですが、この時は異様に美しく思えました。ちょうど、一眼レフカメラで風景の美しい部分を切り取ってシャッターを切ったような感覚でした。それからは、ヒノデで見るものがどのように見えるか神経を集中させるようになりました。

自分の目で見るよりも美しい風景に出会ったおかげで6倍の双眼鏡の価値がようやくわかり始めました。考えてみると、ヒノデの実視界8.4度はフルサイズの一眼レフの300㎜望遠レンズの画角とほぼ同じでした。6倍より高い倍率だと見える範囲がごく限られてくるので、風景を見るというより風景の一部の何かを見ている場合が多いと思います。それにしても、ヒノデの見え方は非常にクリアでコントラストが高く、自分の目が特別の機能で非常に良くなったかのような印象がありました。そう感じるほどヒノデの光学系は完成度が高いと思いました。

6倍の双眼鏡は風景を見るのに良いだけではありませんでした。森の中で使ってみると、これまた見たいところがクリアで自然に見えました。倍率が8倍より低いから物足りないということは全く感じませんでした。むしろ、見たいところを良く見るための道具として快適ささえ感じました。裸眼で見るより木の幹の質感などが立体感を伴ってごく自然に見えました。シジュウカラやメジロなど小鳥の観察もしっかりできましたのでバードウォッチングでも倍率が低すぎるとは感じませんでした。それどころか、無理なく実視界8.4度を見ているので、木の枝と枝の間を飛び回って見え隠れする小鳥を追うならこの倍率の方が良いと感じました。

「無理なく」と書いたのは、もっと倍率の高い双眼鏡でもヒノデ6×30-B+と同じくらいの実視界のものがあるからです。ヒノデ6×30-B+の場合、見かけ視界が50度程度で実視界8.4度を見ることができます。人間が集中して見ることができる視界の範囲はそれほど広くはありません。無理なく広い範囲を見るには倍率を下げるしかないのです。6倍の双眼鏡に意味があるということにようやく気付きました。(もし、小鳥をもっと大きく見たいなら防振機能の付いた10倍以上の倍率の双眼鏡が良いと思っています。ただし、動く鳥を双眼鏡の視野に捉えるのは難しいので、鳥が止まった時に使っていますが。)

ヒノデ6×30は、視野周辺部の像にもこだわっていますが、対物レンズに非球面レンズを使っているのがユニークに感じられます。そして何よりも抜けの良さが秀逸です。他の双眼鏡よりも実体感が感じられるように見え、覗いていてワクワクしてくるような素晴らしさを感じます。

なぜこのように見えるのか、自分なりに考えたのですが、一番の理由は倍率が抑え気味の6倍だからではないかと思います。この倍率だと見ている範囲も狭過ぎず見たいと思う所がごく自然に目の前に近づく感じがします。また、視野周辺までしっかりしている光学系ももちろん優秀ですが、それに加えて抑え気味の倍率で手振れの影響が少ないことがクリアで快適な視野になるのではと考えています。

ヒノデ6×30は自然観察、野鳥観察、星見などあらゆることに使えます。何も考えずに風景を堪能するために使うのにも良いと思います。まさにオールマイティです。この双眼鏡が届いてから1か月ほどになりますが、今では一番メインの双眼鏡になっています。あらためて、双眼鏡の倍率、大きさ、重さ、視野の明るさ、立体感ある見え方、手振れの影響の少なさなどを考えてみると、言わば基本中の基本がポロタイプの6×30だなと思いました。ヒノデは、このスペックを磨きに磨いた双眼鏡ということですね。

スタッフより

6x30は、日の出光学を作るきっかけになったスペックです。私たちがこの6x30というスペックを見つけたとき、使えば使うほどわかってくる、優れた性能にほれ込みました。そして、このスペックの双眼鏡を磨きこんで、最高のものを作り、お客様に届けようと思った、日の出光学の原点を思い出しました。

私たちが6x30に込めた思いをダイレクトにご理解いただけて、感無量です。本当に素敵なレビュー、ありがとうございました。