双眼鏡の倍率・口径と使い道について

双眼鏡の倍率・口径と使い道について

本格的な双眼鏡とは?

一口で、本格的な双眼鏡という場合、やはり、口径30mm〜50mmを指すのが自然です。20mm台だと、どうしても、性能が制限されてしまうからです。ヒノデスタッフは20mm台のコンパクト双眼鏡も大好きなんですが、そこはちょっとお休みして、今回は、本格的な、30〜50mmの双眼鏡についてガイドしてみたいと思います。

口径30mm、40mm、50mm、倍率6倍、7倍、8倍、10倍と、様々なバリエーションがありますが、正直、どれを選んで良いのかわからないというのが、初心者の本音ではないでしょうか。

現在、割と手に入りやすく、よく使われているのは、10x50、7x50、10x40、8x40、8x30といったところです。他にも種類はあり、8.5倍とか、32mmとか、多少前後するケースもありますが、大体この5つに集約されます。この5つに、軍用として使われ、ヒノデのラインナップにもある、6x30を加えて、話を進めてみましょう。

50mmクラス

まずは50mmクラスですが、かつては7x50が、本格双眼鏡の中心でした。約7mmのひとみ径は、人間の瞳孔の最大径とほぼ一致するため、十分な明るさを得られるとされています。現在でも、漁船や小型船舶で使われる双眼鏡は、7x50が多いそうです。かつては、天体観察にも、7x50が最適と言われていました。暗い空を眺めるため、瞳孔が限界まで開くので、7mmのひとみ径が役に立つとされていたのです。(ひとみ径、口径、倍率の関係については、用語集「ひとみ径」をごらんください。)

ただ、最近では、あまりこの説は支持されてないようです。少なくとも日本国内においては、どんなに暗い空でも、ある程度の光害があります。そこで、ひとみ径を7mmまで開いてしまうと、空が白っぽく見えてしまい、コントラストが下がり、星が見えにくくなります。むしろ、ひとみ径を5mm程度まで絞るほうが、背景が黒く引き締まって、星が良く見えるのです。

先日、『Binocular Highlights』というアメリカで出版された、双眼鏡用の、星空ガイドブックを読む機会がありました。そこでもやはり、推奨されていたのはひとみ径5mmの10x50でした。日本よりも暗そうなアメリカにおいてさえ5mmが推奨されるということは、やはり、星を楽しむのに7mmは過剰と考えるのが良いのかもしれません。

ある天文雑誌の編集長は、瞳径7mmのほうが有利なのは、百武彗星レベルの大彗星の尾を観察するときと、月食のときの赤い月を観察するときだけではないか、という話をしていました。他の場合は、5mmのほうがよく見えると。

では、星を見るならやはり、10x50なのかというと、これも難しいところです。10x50の双眼鏡を手で持って、上の方向を見るのは至難の業です。倍率の高さと重さのせいで、手振れの影響がかなり大きくなります。実際、『Binocular Highlights』でも、三脚、もしくは一脚を使うことを推奨しています。それはそれで楽しいですが、少し、手軽さが失われてしまいます。

完全に手持ちで楽しむとすれば、同様にひとみ径5mmである、6x30、8x40がおすすめです。倍率が下がると、その分、視野が広がり、さらに、手振れの影響も減ります。そんな理由から、ヒノデの6x30−Bシリーズも発売以来、天文マニアの方々を中心に、天体観察用として高い評価をいただいています。

ヒノデでは、天体用の双眼鏡として、まず、手持ち用に6x30を一台、次に、三脚や一脚の使用を前提に10x50を一台というのをオススメしています。この二つがあれば、双眼鏡の守備範囲はおおむねカバーできます。

40mmクラス

次に40mmクラスを見てみましょう。10x40は、狩猟のスタンダードだそうですが、私たち日本人には、あまり縁がないスポーツです。まれにバードウォッチングでも使っている人を見かけますが、やはり、手振れが大きいため、スタンダードとは呼べません。やはり、バードウォンチングは8倍が最も一般的です。

8x40は、世界的に見ても鳥見のスタンダードといえますし、上に書いたように、ひとみ径5mmなので、星見にも適切です。ただ、残念ながら、華奢な日本人には、ちょっと大きく、重く感じられるようです。男性で、若い頃には40mmを使っていた人も、やがて、30mmに切り替えるケースがあります。また、女性には40mmは、かなり重く感じられるようです。

8x30はひとみ径4mm弱ですが、十分にバードウォッチングが楽しめます。ベテランの方でも、8x30をメインに使っている人は少なくありません。ただ、それでも8x40にこだわる人がいるのは、やはり、5mmのひとみ径(=明るさ)を求めるからでしょう。ひとみ径の大きさは、暗い林の中や、朝方や薄暮において観察をするときにモノをいいます。バードウォッチングを深く楽しむようになれば、そういうシチュエーションに遭うことも多くなります。

逆に、明るいところでは、瞳孔も2〜3mm程度まで絞られます。その場合は、ひとみ径が5mmでも、4mmでも全く変わりません。明るいところで使う前提なら、8x40は過剰なサイズとなります。また、8x40は、コンサートやスポーツ観戦で使うには、大きさ的に、多少大げさな感じになります。旅行などで持ち歩くにしても、ちょっとした荷物になってしまいます。

ただ、たとえば、カメラが趣味で、普段から一眼レフカメラを持ってあるいている、という方なら、700gの双眼鏡でも、それほど重く感じないでしょう。実際、慣れてしまえば問題ないという方もいらっしゃいます。8x40は、大きさと重さをクリアできれば、オールマイティな双眼鏡です。

30mmクラス

最後に、30mmクラスを見てみましょう。30mmクラスは、旅行に持って行ったり、車に積んで置いたりしても邪魔になりません。スポーツ観戦やコンサートで使っていても、それほど大げさな感じではありません。そういう意味で、オールラウンドに使える本格双眼鏡といえます。私自身も、双眼鏡を使い始めて以来、メインはずっと30mmです。

8x30でのバードウォッチングについては、上で説明しましたが、6x30でのバードウォッチングも悪くないです。ひとみ径5mmで、明るさは十分に取れますし、視野が広いので、鳥を探しやすいという利点があり、慣れていない人にはありがたいです。最終的には迫力不足を感じる可能性がありますが、そこまでのめりこんだ人は、大抵、双眼鏡を複数台持って、場合によって使い分けるようになるか、20万円クラスの高級品に手を伸ばすか、ということになるものです。あとあと8x40を買い足したとしても、6x30には全く違う快適さがありますので、無駄になることはありません。

8x30を星見に使う場合、ひとみ径が絞られるため、見える星が少なくなります。星を見るときは、倍率以上に明るさが重要になります。倍率が下がったとしても、そのぶん、視野が広がりますので、悪い気はしません。6x30での星見は、上でも紹介したとおり、明るく、見やすく、快適なものになります。

6x30は陸軍で使われる双眼鏡です。手振れに強く、あかるく、視野が広いからでしょう。このメリットは、景色や建物を見るときにも発揮されます。スポーツ観戦やコンサートにもぴったりです。私自身も、メインの双眼鏡は長い間、8x32でしたが、知人に6x30のすばらしさを教わって以来、6x30がメインになりました。その体験から生まれたのが、ヒノデ6x30−Bシリーズです。日の出光学では、最初に手にする本格的な双眼鏡として、6x30をオススメしています。オールラウンドで基準になりうる双眼鏡だからです。長く使い続けるもよし、今後、これをひとつの基準として、様々なスペックに挑戦するもよしです。まず、無駄になりません。

最初に手にする本格双眼鏡として、6x30をおすすめします。

ヒノデのお客様の中には、一番良い(性能が高い)のが欲しいからという理由で、ラインナップの中で最も高価な、ヒノデ8x42−C2を選ぶ方がいらっしゃいます。

しかし私たちは、初めて双眼鏡を手にする方が、双眼鏡の面白さを存分に味わうためには、8x40よりも6x30のほうが適切と考えます。光学の世界には、「最も頻繁に使用する道具が、最も優れた道具だ」という格言があるのですが、6x30は、まさに、最も頻繁に使われる可能性を秘めています。ですから、たいていの場合は、6x30をオススメしています。

ヒノデ6x30−Bシリーズが、8x42−Cシリーズと比べて性能面で劣るということはありません。個性が違うだけです。価格の差は、主に、レンズやボディが大きいぶんの材料費の差であり、性能の差ではありません。

価格もそうなんですが、数字というものには妙な説得力があり、私たちは、どうしてもそこを判断基準にしてしまいがちです。倍率も同様で、「高倍率=高性能」と考えている方はまだまだ多く、メールや電話で、「ヒノデのホームページのおかげで倍率のことが良くわかった。」という、うれしいメッセージをよくいただきます。

もし、満足な説明もなしに6倍、8倍、10倍の双眼鏡が並んでいたら、初めて双眼鏡を買う人が、6倍を選ぶ可能性はきわめて低いでしょう。そういう理由で、使い勝手の良い6倍の双眼鏡は売り場から姿を消しました。決して性能の低さゆえに姿を消したわけではありません。

日の出光学は、インターネットという新しい売り場で、十分に説明をすることで、6x30の復権を目指します。今、他メーカーのカタログからはほぼ全滅状態である6x30が、また復活したら面白いですよね。ヒノデとしてはライバルが増えて、商売にならなくなってしまうかも?・・・そんなことがないように日々、努力を重ねる所存です!