「本当に検品しているんですか?」 ~その3 ピントノブ

お客様からいただいたご意見・ご指摘をベースに、まさに「検品者泣かせ」といえる種類の不良について、ケース別に解説する3回目。今回は、Bシリーズのピントノブについて書いていきましょう。

今回は、ヒノデBシリーズにお寄せいただいたアマゾンのレビューがベースです。不良のケースとしては珍しいものではありません。

レビューを要約すると、 「ピントあわせの操作が滑らかでなく、途中で力を入れないと回らない箇所がある。検品ができていない。沢山の双眼鏡を見てきたが、初めての経験である・・・」というものです。


これは本当に申し訳ないことです。心底残念なのは、このお客様が29,500円もかけてお買い上げいただいたこのB+を、このまま交換することなく使い続けているということです。このコラムをごらんいただくことがありましたら、一言ご連絡ください。速やかに新しい個体をお送りいたします。


ではなぜこのような不良が見過ごされてしまったのか。それはこのBシリーズの構造と、日本の四季の温度変化が関係しています。

Bシリーズのピント部分の重さに関しては、構造的に不利な点が2つあります。

1、防水のために空気の漏れがないよう可動部分にOリングを多用している点
2、防水なので鏡筒内部が密閉されていながら、ピント機構を動かすと鏡筒内部の容積が変わってしまうこと。

1については、ピントを動かしたときのOリングと本体のすり合わせで生まれる摩擦は大きく、トラブルの原因になりやすいです。

2については、Bシリーズは防水のために内部に窒素を封入して密閉しています。しかし、ダハで一般的なインナーフォーカスとは違い、接眼部を動かしてピントを変化させているので、ピントを動かすたびに鏡筒内部の容積が変わります。すると中の気圧が変化するので、常にピント機構に対して押し出しや引っ張りの圧力がかかるという特性があります。


このように難しいフォーカス機構ですから検品時にも気をつかっているのですが、これがとても検品者泣かせだったりします。 冬のグリスが硬い時期に検品をすると、ピントノブ重さの変化に気づきにくいのです。

グリスが硬い時にはフォーカス機構全体の動きが重くなるので、Oリングと本体のすり合わせ部分で起きている摩擦の変化に気づきにくいです。

そこで検品をすり抜けてしまった個体が、夏のグリスが柔らかい時期にお客様に渡ります。その状態で使ううちにグリースは機械になじみます。その結果、フォーカス機構は軽くなり、お客様はノブの重さの変化に気づくわけです。


ヒノデでは全品検査を基本としていますが、そのクオリティーは完璧ではありません。このように検品では発見しきれない不良もありますし、検査員も人間ですから間違いがあります。その自覚があるからこそ30日間の無条件返品・交換と、三年間の品質保証を承っております。

お客様がより良い双眼鏡を欲しているように、私どももより良い双眼鏡を提供したいと考えております。製品に違和感を感じた場合はご遠慮なくお申し出ください。