「本当に検品しているんですか?」 ~その2 内部のゴミ

お客様からいただいたご意見・ご指摘をベースに、まさに「検品者泣かせ」といえる種類の不良について、ケース別に解説する2回目。今回は、内部のゴミについて書いていきましょう。


上の写真は、双眼鏡の筒の中をデジカメで撮影したものですが、恐らくはプリズムの上に何かの削りカスが乗っている状態です。静電気の力なのか、削りカスそのものにグリースが付いていたのか、ボディを振ったり軽くたたいたりしても動きません。


このサイズのゴミがプリズムについていても、実際に双眼鏡を覗いて景色を見るときには全く問題ありません。接眼レンズから目を離したり、対物側から見たりしない限りは見えないからです。

実際、ゴミがないものとあるものを覗くきらべても、その違いを見分けられる人はいません。

ゴミの大きさや位置にも寄りますが、覗いたときに支障がないものについては、Nシリーズ、Aシリーズ、Kシリーズなどのクラスの双眼鏡においては、そこまでコストをかけられないということもあり、ある程度ご容赦いただいております。(詳しくは、『ヒノデが考える双眼鏡の品質について』)


しかし、やはりS1やD1、B+などの中級機以上の機種の場合はそういうわけにもいきません。私たちも、できる限り検品ではじきます。

例えば上記の写真のように、中央部にあの大きさのゴミがある場合は、検品の際に、ほぼ確実に発見できます。ゴミが発見された場合は、もちろん、不良品としてはじきます。

しかし実際に、上の写真の双眼鏡はお客様の手に渡ってしまいました。電話口のお客様はおっしゃいました。

「本当に検品しているんですか!?」


お客様のおっしゃることはごもっともです。このタイプの不良が検品者泣かせなのは、おそらく検品したタイミングでは、このゴミは見えない場所にあったということです。

おそらくこのゴミは、レンズやプリズムには付着しておらず、双眼鏡のボディ内部にくっついていたのでしょう。もちろん、検品の時点では見つけることができません。

私どもの手を離れ、宅配便のトラックで揺られるうちに、そのゴミは振り落とされてプリズムの上に落ちます。元々ボディの内側にあったものなので、グリースが付いていることも多いでしょう。一度プリズムの上に落ちたゴミはプリズム表面から剥がれません。


実際、双眼鏡は工場で完成したときに一度、検品されます。その時にもゴミがあるものははじかれます。

そのあと、日の出光学の倉庫に送られてきます。その時にヒノデの検査員が検品しますが、やはり、輸送中に出てきてしまうのか、ゴミがあるものが発見され、はじかれます。

しかし、そこではじいても、お客様の手元に届いたとき、ゴミが出てきてしまうことがあります。これはおそらく、宅配便のトラックで運ばれるときが一番大きく揺れるからではないでしょうか。